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第269首 あとでまた
のちせやま のちもあわんと おもえこそ しぬべきものを きょうまでもいけれ
(大伴宿祢家持)
後瀬山に籠ってしまうのもいいかもしれません。
でもこれから後もあなたと会おうと思うからこそなのですよ。
いつ死ぬか分からないこの身がこうして今日まで生きているのは。
【ちょこっと古語解説】
○後瀬山……福井県小浜市中央部にある山。
○こそ……強調の語。文末に来る語を通常の「終止形」から「已然形」という形に変える効果を持つ。これを「係り結び」と言う。
○生けれ……元の形は「生く」で、この形になっているのは、前述した「こそ」の効果。
【ちょこっと背景解説】
この和歌は、第267首への返歌。返歌とは、ある和歌に対する「返」事としての和「歌」のこと。
後瀬山後も逢はむとおもへこそ死ぬべきものを今日までも生けれ
(万葉集4-739)




