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第267首 またあとで
かにかくに ひとはいうとも わかさじの のちせのやまの のちにもあわんきみ
(坂上大嬢)
わたしたちの仲を、あれこれと人は取り沙汰するかもしれません。
いっそ若狭道をたどって、後瀬の山にでもこもってしまいましょうか
いいえ、それよりも、人の言葉など聞かないで、これから先も会いましょう。
【ちょこっと古語解説】
○かにかくに……あれこれと。
○人……恋の和歌だと、「恋人」を指すことが多いが、ここでは、「他人」の意。
○若狭道……若狭へ行く道。若狭は、今の福井県南西部。
○後瀬の山……福井県小浜市中央部にある山。
○若狭道の後瀬の山の……次に来る「後」という語を導くための序詞。序詞とは、ある語を導くために置かれるイントロ部分のこと。
かにかくに人はいふとも若狭道の後瀬の山の後にもあはむ君
(万葉集4-737)




