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第262首 名惜しまず
いましわし なのおしけくも われはなし いもによりては ちたびたつとも
(大伴宿祢家持)
今となっては、もうこの名が惜しいことなどありません。
名が惜しいと思っていたのは、昔、あなたと出会う前のこと。
その頃は、確かにこの名が惜しいと思っていました。
しかし、あなたと出会った今となっては、わたしの名などどうでもいい。
あなたとの関係が原因であれば、千回浮き名が立っても、構わない気持ちです。
【ちょこっと古語解説】
○いましはし……今となっては。
○おしけくも……惜しいことも。
○妹……男性から見て親しい女性を指す。
○千遍……千回。転じて、回数が多いこと。
いましはし名の惜しけくもわれは無し妹によりては千遍立つとも
(万葉集4-732)




