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第261首 惜しむ名誉
わがなはも ちなのいおなに たちぬとも きみがなたたば おしみこそなけ
(大伴坂上大嬢)
わたしは誰とでも関係するような女なんだって、
みんな言うかもしれない。
でも、そんなことはどうでもいいの。
わたしの名誉なんて惜しくはない。
ただし、もしもわたしと関わることで、あなたまでそんな風に言われたら、
あなたの名誉のことを思って、わたしは泣くでしょう。
【ちょこっと古語解説】
○千名の五百名……「千名」も「五百名」も、いずれも、「様々な噂」の意。
○立ちぬ……「ぬ」は完了を表す語。「立った」くらいの訳。
○とも……「たとえ~だとしても」の意を表す語。
○惜しみこそ泣け……「み」は、「~なので」を表す語。「泣け」というのは命令の意ではなく、「こそ」という語のせいでそのように変わっているだけで、「泣く」に同じ。「こそ~泣け」という形で、感情を込めている。「惜しんで泣くでしょうが」くらいの訳。
わが名はも千名の五百名に立ちぬとも君が名立たば惜しみこそ泣け
(万葉集4-731)




