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第260首 間の悪い夜
あわんよは いつもあらんを なにすとか そのよいあいて ことのしげきも
(大伴坂上大嬢)
会おうと思えば会える夜はいつでもありました。
それなのに、どうしてまたあの晩にお会いしてしまったのでしょうか。
あの晩、お目にかかったことが周囲に知られて、
わたしたちの仲に関する噂が、うるさいほどになってしまいました。
【ちょこっと古語解説】
○逢はむ……「逢ふ」+「む」。「逢ふ」は、単に会うことだけではなく、男女が一夜を共にすることまでを含む。「む」は婉曲を表す助動詞。訳さなくてよい。全体として、「一夜を共にする」くらいの意味。
○何すとか……どうしてか。
○言の繁き……「言」は「噂」の意。「繁き」は元の形は「繁し」で、「あまりにも多くてうっとうしい」という意。全体で、「噂がうっとうしいほどなされるようになった」ほどの意味。
逢はむ夜は何時も有らむを何すとかそのよひ逢ひて言の繁きも
(万葉集4-730)




