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第259首 巻きたい人
たまならば てにもまかんを うつせみの よのひとなれば てにまきがたし
(大伴坂上大嬢)
宝石のようなあなたが、本当に宝石であったらと思います。
そうすれば、手元に置くこともできるのに。
この世の人だからしょうがありません。
手に巻くこともできません。
【ちょこっと古語解説】
○玉……宝石のこと。ボールのことではないので注意。「玉のような子」というのは、「宝石のように美しい子」という意味であって、ボールのようにころころしている子という意味ではない。
○む……意志を表す助動詞。「~しよう」くらいの訳。
○うつせみの……「世の人」を導く枕詞まくらことば。枕詞とは、それ自体意味を持たず、ある語を導くという効果を持った語のこと。
○なれば……「なれ」+「ば」。「なれ」は、断定を表す語「なり」で、「ば」は、ここでは、「~ので」と理由を表している。全体で、「~であるので」くらいの訳。
○難し……「~するのが難しい」という意味。
玉ならば手にも巻かむをうつせみの世の人なれば手に巻き難し
(万葉集4-729)




