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第26首 乱れ乱れて
みちのくの しのぶもじずり たれゆえに みだれそめにし われならなくに
(河原左大臣)
みちのくにあるしのぶずりのその美しい乱れ模様。
その模様のようにぼくの気持ちも乱れている。
誰のせいだろう。
ぼく自身のせいじゃない。
他ならぬきみのせいで、これほど心乱れているんだ。
【ちょこっと古語解説】
○陸奥……東北地方。特にその東半分。
○しのぶもぢずり……現在の福島県信夫地方から産出された乱れ模様の摺り衣。摺り衣は、忍草の茎や葉の汁を摺りつけて染めた衣のこと。
○われならなくに……「~なくに」は、「~ではないのに」という意味。この和歌が詠まれた頃には、古い言い方になっていた。「われならなくに」で、「わたし(のせい)ではないのに」くらいの訳。
陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにしわれならなくに
(古今和歌集/恋4-724)




