251/297
第250首 片想いの苦
つれもなく あるらんひとを かたもいに われはおもえば くるしくもあるか
(大伴宿禰家持)
こちらがどれほど思っても、あの人は振り向いてくれない。
今もわたしのことなんて なんとも思っていないだろう。
いつまでつづくのか分からないこの片想い。
心が苦しいのは、あの人に寄せるこの気持ちゆえなのだ。
【ちょこっと古語解説】
○つれもなく……元の形は、「つれもなし」で、「冷淡だ・つれない」意。
○らむ……現在推量の助動詞。「今~しているだろう」くらいの訳。
○思へば…… 「思へ」は、元の形は「思ふ」で、単に心に何かを思い浮かべる意ではなく、「思いを寄せる・愛する」の意。「ば」は、「~なので」と原因・理由を表しており、「~ならば」という仮定ではないので注意。全体で、「思いを寄せるので」ほどの訳。
つれもなくあるらむ人を片思に我は思へば苦しくもあるか(万葉集4-717)




