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第248首 川の向こう
ちどりなく さほのかわとの きよきせを うまうちわたし いつかかよわん
(大伴宿禰家持)
千鳥が鳴いている。
佐保川の清らかな瀬が見える。
想いを寄せるあの人は、この川の向こう。
馬を打ってこの川を渡り会えるのは、いつのことになるだろうか。
【ちょこっと古語解説】
○千鳥鳴く……「千鳥」は、チドリ科の鳥の総称。「千鳥鳴く」は、「佐保」とセットでよく使われる。
○佐保……今の奈良県奈良市の佐保川北岸の一帯。
○河門……川の両岸が迫って川幅が狭くなっている所。
○瀬……川の浅くなっているところ。
○打ち渡し……元の形は、「打ち渡す」で、鞭などで打って馬を渡らせる、こと。
○通は……元の形は、「通ふ」で、ここでは、男が女の元へと通うこと。
○む……意志を表す助動詞。
千鳥鳴く佐保の河門の清き瀬を馬打ち渡しいつか通はむ
(万葉集4-715)




