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第245首 月光に夢む
みそらゆく つきのひかりに ただひとめ あいみしひとの いめにしみゆる
(安都扉娘子)
漆黒の夜空に、月が輝いている。
その月の光をかつて、ある人と一緒に浴びたことがある。
一度きりの逢瀬。
そのときのことを、今も夢に見る。
【ちょこっと古語解説】
○み空……空の美称。
○相見し……「相見」は、元の形は「相見る」で、互いに互いを見ること。古語の「見る」には、単に視界に収めるだけではなく、男女が夜を共に過ごす意まで含むことがあることに注意。「し」は、元の形は「き」で、過去を表す助動詞。
○し……強調を表す語。
み空行く月の光にただ一目相見し人の夢にし見ゆる
(万葉集4-710)




