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第243首 片想いの底
おもいやる すべのしらねば かたもいの そこにそわれは こいなりにける
(栗田女娘子)
この思いをどう晴らせばいいのだろう。
そんなこと、できるはずもない。
あの人を片想いして、グラスの底にいるかのよう。
上から引き上げて出してもらえるのをずっと待っている。
【ちょこっと古語解説】
○思ひ遣る……思いを晴らすこと。現代語の「おもいやり」ではないことに注意。
○すべ……方法のこと。
○ねば……「ね」は元の形は「ず」で、「~ない」の意。「ば」は、「~なので」の意。全体で、「~ではないので」くらいの訳。
○かたもひ……「片想(=二人のうち、一方だけが相手を思うこと)」と、「片垸(=蓋のない水飲み用の容器)」の、二つの意味を一語で表している。このように、同音を利用して、一つの語に二つの意味を重ね合わせる技法を、掛詞と言う。
思ひ遣るすべの知らねばかたもひの底にそ我は恋ひなりにける
(万葉集7-707)




