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ワカコイ ~恋の和歌~  作者: coach
万葉の歌
240/297

第239首 思い出の月

ぬばたまの そのよのつくよ きょうまでに われはわすれず まなくしおもえば

(河内百枝娘子)

 あなたにお会いしたあの夜、あなたの腕の中で月を見上げました。

 それはもう随分と昔のことになりますが、今日まで忘れたことはありません。

 あなたにお会いしてから、あなたのことを思わないときがありませんもの。


【ちょこっと古語解説】

○ぬばたまの……「暗黒」に関連する語を導く、枕詞(まくらことば)。枕詞とは、それ自体に意味は無く、ある特定の語群を導くための言葉のこと。

月夜(つくよ)……ここでは、「月」そのもののこと。「月の明るい夜」という意味にもなる。

()なくし思()ば……「間なく」とは、絶え間ないこと。「し」は、強調を表す語で、訳には現われない。現代でも使われている慣用句で、「生きとし生けるもの」という言い方があるが、そこに使われている「し」は、この強調の「し」。「思へ」は、元の形は「思()」であり、単に何かの考えを心に抱くという意ではなく、「愛する」や「心配する」という意味がある。「ば」は、「~すると」ほどの意で、「~したら」という仮定の意味ではないので、注意。

ぬばたまのその夜よの月夜今日までに吾は忘れず間なくし思へば

(万葉集4-702) 

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