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第237首 帰り道遠く
かくしてや なおやまからん ちかからぬ みちのあいだを なづみまいきて
(大伴家持)
準備を万端整えて、ようやく会いに来ることができた。
こうまでしてきたのに、帰されなければならないのか。
ただ来るだけでも遠い道のり。
それを何とかやってきたのに。
【ちょこっと古語解説】
○かく……このように。
○や……疑問を表す語。
○退らむ……「まから」+「む」。「まから」は元の形は「まかる」で、「身分の高い人のいるところから退出する」こと。「む」は、推量を表す助動詞で、「~だろう」の意。全体で、「退出するだろう」くらいの訳。
○ぬ……元の形は「ず」で、打消を表す助動詞。「~ない」の意。
○なづみ……元の形は「なづむ」で、「中々進まずに苦しむ」こと。
かくしてやなほや退らむ近からぬ道の間をなづみ参ゐ来て(万葉集4-700)




