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第235首 ただひとり
ももしきの おおみやひとは おおかれど こころにのりて おもおゆるいも
(大伴家持)
宮中に美しい女官は数多い。
でも、ぼくが思うのはいつも一人だけ。
それがきみだ。
ぼくの心に乗り移って何にも考えられなくさせてしまう。
【ちょこっと古語解説】
○ももしきの……大宮を導く枕詞。大宮とは宮中のこと。枕詞とは、特定の語を導くための言葉であり、それ自体は意味を持たないもの。
○大宮人……宮中に使える人。
○乗り……元の形は「乗る」で、ここでは、「のりうつる」こと。
○妹……男性が親しい女性(妻、恋人、姉妹など)を呼ぶ時の言葉。
ももしきの大宮人は多かれど心に乗りて思ほゆる妹(万葉集4-691)




