第231首 長く乱れて
いなといわば しいめやわがせ すがのねの おもいみだれて こいつつもあらん
(中臣郎女)
わたしの告白に、中々答えをくれないあなた。
もしもいやだと言うなら、どうして無理強いなどしましょうか。
それでも、あなたを好きでいることだけは許してください。
長く乱れる菅の根のように、いつまでも気持ちを乱しながら、あなたのことを思い続けます。
【ちょこっと古語解説】
○否……いいえ、いやだ、の意。
○強ひめや……「強ひ」は、元の形は「強ふ」で、無理に押しつける意。「め」は元の形は「む」で、意志を表す助動詞。「や」は反語を表す語で、反語とは、「~だろうか、いや~ではない」と疑問の形を借りて否定を行うもの。全体で、「無理に押し付けることなどしようか、いやしない」くらいの訳。
○背……女性が、親しい男性(夫、兄弟、恋人など)を呼ぶ時の言葉。
○菅……カヤツリグサ科の植物の総称。笠(頭にかぶるタイプのカサ)や蓑(昔のレインコート)や縄などの材料になる。
○つつ……動作の反復・継続を表す語。
否と言はば強ひめや我が背菅の根の思ひ乱れて恋ひつつもあらむ(万葉集4-679)




