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第230首 恋の止む時
ただにあいて みてばのみこそ たまきわる いのちにむかう わがこいやまめ
(中臣郎女)
あなたにじかに会って一夜を共にする。
そのときこそ、わたしの恋は終わるのでしょう。
命をかけた恋が。
【ちょこっと古語解説】
○直に……直接に。
○逢ひ……元の形は「逢ふ」で、ただ会うだけではなくて、男女が一夜を共にすることまで含む。
○見……元の形は「見る」で、これもただ見るだけではなくて、一夜を共にしたり、結婚したりすることを含む。
○こそ……強調を表す助詞。
○たまきはる……「命」を導く枕詞。枕詞とは、それ自体には意味がなく、ある特定の語句を導く効果を持つ言葉のこと。
○め……元の形は「む」で、推量を表す語。
直に逢ひて見てばのみこそたまきはる命に向かふ我が恋止まめ(万葉集4-678)




