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第229首 恋心遠くへ
かすがやま あさいるくもの おおほしく しらぬひとにも こうるものかも
(中臣郎女)
春日山に朝、雲がかかっている。
その雲のようにぼんやりとしながらあの人のことを思う。
話したこともない人。
そういう人にも恋をすることがあるんだなあ。
【ちょこっと古語解説】
○春日山……今の奈良市東部、春日大社の背後にある山。
○居る……動かずにとどまっている。
○おほほしく……元の形は「おほほし」で、「ぼんやりしている」意。
○かも……詠嘆を表す語。「~だなあ」くらいの訳。「~かもしれない」という意味ではない。
春日山朝居る雲のおほほしく知らぬ人にも恋ふるものかも(万葉集4-677)




