227/297
第226首 噂への憂い
あらかじめ ひとごとしげし かくしあらば しえやわがせこ おくもいかにあらめ
(坂上郎女)
もうわたしとあなたの間に噂が立ってしまいました。
その噂が頻繁に聞こえてくること。
今のうちからこのようでは、もう覚悟を決めるしかないのでしょうか。
ねえ、あなた、この先どうなってしまうのか心配です。
【ちょこっと古語解説】
○あらかじめ……前々から。
○人言……他人の噂。
○繁し……「多い」を意味するが、「多くてわずらわしい」という意味にもなり、ここでは後者。
○かくしあらば……このようであるならば。
○しゑや……「えいっ、もうどうにでもなれ」と物事を思い切るときの言葉。
○背子……女性が親しい男性(夫・恋人・兄弟)を呼ぶときの呼び方。
○奥……これから先。
○いかにあらめ……「どうなるのだろう」くらいの意味。
あらかじめ人言繁しかくしあらばしゑや我が背子奥もいかにあらめ(万葉集4-659)




