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ワカコイ ~恋の和歌~  作者: coach
万葉の歌
225/297

第224首 翻意の早さ

おもわじと いいてしものを はねずいろの うつろいやすき わがこころかも

(坂上郎女)

 あの人のことをもう想わないようにしよう、報われない恋だから。

 そう誓ったけれど、すぐに心変わり、どうしてもあの人のことを想ってしまう。

 まるではねずで染めた色みたい。

 その色がすぐにあせてしまうように、わたしの決心もすぐにひるがえってしまう。


【ちょこっと古語解説】

○思()じ……「思は」は、元の形は「思()」で、単に心に浮かべるということではなく、恋しく思うこと。「じ」は打消(うちけし)の意志を表す助動詞で、「~しないようにしよう」という意味。全体で、「恋しく思わないようにしよう」くらいの訳。

○てし……「て」は、元の形は「つ」で完了を表す助動詞。「し」は、元の形は「き」で過去を表す助動詞。過去のある時に、何かが完了したことを表す。

○ものを……逆接を表す語。「~だけれども」の意。

○はねず色の……はねず(=初夏に赤い花をつける植物)で染めた色があせやすいところから、「移ろ()やすし」を導く。このようにある語を導くための語のことを、枕詞(まくらことば)という。

○かも……詠嘆を表す語。「~だなあ」くらいの訳。

思はじと言いてしものをはねず色のうつろひやすき我が心かも(万葉集4-657)

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