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第222首 千鳥を妬み
さよなかに ともよぶちどり ものもうと わびおるときに なきつつもとな
(大神郎女)
夜中にしきりに千鳥の鳴き声がします。
友を呼んで鳴いているのです。
ひとりで恋の物思いにふけり、つらい気持ちでいる夜。
その声を聞いていると、たまらない気持ちになるのです。
【ちょこっと古語解説】
○さ夜中……夜中、に同じ。
○千鳥……鳥の名。ちどり科の鳥の総称。川・海・湖沼の水辺に群れをなしてすむ。
○物思ふ……物思いにふける。
○わび居る……「わび」は元の形は「わぶ」で「気落ちする」意。「居る」は元の形は「居り」で動詞のあとに続けると「~し続ける」意を添える。
○つつ……動作の反復を表す。
○もとな……むやみに。
さ夜中に友呼ぶ千鳥物思ふとわび居る時に鳴きつつもとな(万葉集4-618)




