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第221首 枕を夢見て
わがせこは あいおもわずとも しきたえの きみがまくらは いめにみえこそ
(山口女王)
わたしがあなたを思うほど、思いを返してくれないあなた。
夢の中でさえわたしに会いに来てはくれない。
たとえこのままわたしの思いが届かないとしても願いたい。
せめてあなたの枕くらいは夢に見ることを。
【ちょこっと古語解説】
○背子……女性が親しい男性を呼ぶ時の呼び方。
○相思はず……「相思は」は、元の形は「相思ふ」で、「お互い同じように愛しく思う」という意味であり、「ず」は、打消を表す助動詞。全体で、「お互い同じようには愛しく思っていない」くらいの訳。
○しきたへの……「しきたへ」が寝具を表すことから、「床」「枕」などを導く。このように、ある語を導くために、その前に置かれる言葉のことを、枕詞という。
○夢……ここでは、「いめ」と読む。
○こそ……元の形は「こす」で、希望を表す助動詞。
我が背子は相思はずともしきたへの君が枕は夢に見えこそ(万葉集4-615)




