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第22首 忘れ草の種
わすれぐさ なにをかたねと おもいしは つれなきひとの こころなりけり
(素性法師)
夏の日に忘れ草が大輪の花を開いている。
まるで心配ごとなんて無いみたいに目いっぱい。
いったいこの草は何から生まれたんだろう、なんて考えてみた。
冷淡な人の心から生まれたんじゃないかって、そんなことを思ったよ。
【ちょこっと古語解説】
○忘れ草……ユリ科のカンゾウ類の総称。初夏に花をつける。若葉は食用となり、それを食べると、嫌なことを忘れられるという。
○つれなき……元の形(=辞書で引くときの形)は、「つれなし」で、「冷淡な」の意。現代語でも「つれない」という。第6首、11首に同じ。
○けり……和歌の中で使われると、「~だなあ」という詠嘆の意を表す。第21首に同じ。
忘れ草何をか種と思ひしはつれなき人の心なりけり
(古今和歌集/恋5-802)




