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第217首 気鬱のわけ
いまさらに いもにあわめやと おもえかも ここだわがむね いぶせくあるらん
(大伴家持)
なぜかこのごろ気づまりでうっとうしい。
今はもうあなたに会うことはない。
そう思うからなのだろうか。
これほどぼくの胸がふさがって気が晴れないのは。
【ちょこっと古語解説】
○今さらに……今はもう。
○妹……男性が女性を親しんで呼ぶときに使う語。現代語の妹に限られず、「妻・恋人・姉」も指す。
○めや……「~だろうか、いや~ない」という意味。
○ここだ……こんなにもはなはだしく。
○いぶせく……元の形は「いぶせし」で、気が晴れない気持ちを表す。
○らむ……現在の推量を表す助動詞。「今~しているだろう」くらいの訳。
今更に妹に逢はめやと思へかもここだ我が胸いぶせくあるらん(万葉集4-611)




