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第212首 苦しみ比べ
ますらおも かくこいけるを たわやめの こうるこころに たぐいあらめやも
(大伴坂上大嬢)
あなたがわたしにくださった歌。
わたしのことをどれほど思ってくださっているのか分かりました。
あなたのような立派な男性でさえそのように恋に苦しんでいるのですね。
でも、わたしのようなか弱い女があなたを思う苦しさに比べればまだまだですよ。
【ちょこっと古語解説】
○ますらを……心身ともに人並みすぐれた強い男子。
○かく……このように。
○たわやめ……しなやかで優しい女性。
○めやも……「~だろうか、いや~ではないなあ」ほどの意。
ますらをもかく恋ひけるをたわやめの恋ふる心にたぐひあらめやも(万葉集4-582)




