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第210首 真実の恋を
くろかみに はくはつまじり おゆるまで かかるこいには いまだあわなくに
(坂上郎女)
黒髪に白髪が交じる年になりました。
この年までいろいろな人と知り合って、それなりに恋をしてきました。
人を好きになるって素敵なこと、でも、それだけのこと。
そんなわたしの思い違いを正すかのようにあなたがあらわれたの。
人に惹かれるということの本当の意味が分かる恋。
このように年老いるまで、こんな恋にはあったことがありません。
【ちょこっと古語解説】
○あはなくに……「なくに」は、「~ないことだなあ」と打消に詠嘆の意を込める表現。全体で、「あわないことだなあ」くらいの訳。
黒髪に白髪交じり老ゆるまでかかる恋にはいまだあはなくに(万葉集4-563)




