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第207首 風の無い身
かぜをだに こうるはともし かぜをだに こむとしまたば なにかなげかん
(鏡王女)
訪れたものの正体が風であっても羨ましい。
風を恨むことができるのも恋人が訪れる可能性があるからこそ。
それさえもない我が身。
風だけだとしても、恋人を待てるのならば何を嘆くことがありましょうか。
【ちょこっと古語解説】
○だに……「~でさえ」の意。
○羨し……うらやましい。
○何か嘆かむ……「か」は反語。反語とは、「~だろうか、いや~ではない」と、疑問の形を借りた否定。「む」は推量。「何を嘆くことがあろうか、何も嘆くことなどないだろう」くらいの訳。
風をだに恋ふるは羨し風をだに来むとし待たば何か嘆かむ(万葉集4-489)




