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第206首 心揺らす風
きみまつと わがこいおれば わがやどの すだれうごかし あきのかぜふく(額田王)
秋の一夜に恋しいあなたを待ちわびている。
今夜は来てくれるかもしれない、いいえ、きっと来てくれる。
ふと簾が揺れたのに、心も揺れて、振り返ったわたしは目を伏せる。
あなたの訪れだと思わせた秋風の憎らしさ。
【ちょこっと古語解説】
○恋ひ……元の形は「恋ふ」で、「恋しく思う」の意。
○ば……「~すると」ほどの訳。「~したら」という仮定の意味ではないので、注意が必要。
○屋戸……家のこと。
君待つと我が恋ひ居れば我が屋戸の簾動かし秋の風吹く(万葉集4-488)




