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第203首 心知られて
つくまのに おうるむらさき きぬにしめ いまだきずして いろにいでにけり
(笠女郎)
託馬野に生えている紫草。
その草で染めた赤紫の美しい衣。
あなたの気持ちがこもったその衣を着る前に知られてしまいました。
この恋のことを。
【ちょこっと古語解説】
○託馬野……現在の滋賀県坂田郡米原町筑摩あたり。
○紫草……むらさき草。根から赤紫色の染料をとる。
○色に出にけり……色は表面のこと。「色に出づ」とは、表面に現れたというところから、人に知られたということ。「にけり」は、「~してしまったのだなあ」と、何かが完了したことに気づいたことを表す。
託馬野に生ふる紫草衣に染めいまだ着ずして色に出にけり(万葉集3-395)




