第202首 無理な願い
なおもいそと きみはいうとも あはんとき いつとしりてか わがこいざらん
(依羅娘子)
思いつめないでくれとあなたは言うかもしれません。
でも、次にお会いできる時はいつなのでしょう。
いついつだと知れば、これほど恋い慕わないかもしれません。
いつか分からないからこそ、こうして物思いにふけってしまうのです。
【ちょこっと古語解説】
○な思ひそ……「な~そ」で柔らかな禁止を表す。「~しないでください」くらいの訳。「思ひ」は、元の形は「思ふ」で、心配するの意。古語の「思ふ」は、現代語と違って意味が広く、他に愛するなども含む。
○とも……「たとえ~するとしても」の意。
○逢はむ時……「逢ふ」は、単に会うだけではなく、一夜を共にすることを含む。「む」は、婉曲を表す助動詞。訳には表れない。全体で、「会う時」くらいの訳。「会わない時」と訳さないように注意。
○恋ひざらむ……「恋ひ」の元の形は「恋ふ」で、恋しく思うこと。「ざら」の元の形は、「ず」で打消を表す助動詞。「む」は、推量を表す助動詞。全体で、「恋しく思わないだろう」くらいの訳。
な思ひそと君はいふとも逢はむ時いつと知りてか我が恋ひざらむ(万葉集2-140)




