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第201首 別れのおと
ささのはは みやまもさやに さやげども われはいもおもう わかれきぬれば
(柿本人麻呂)
風が吹いて、笹が、葉ずれの音を立てる。
さわさわ、さわさわ、と美しい山を震わせている
わたしの心も震えているのは、彼女のことを考えているから。
別れて来て、次にいつ会えるか分からない妻のことを。
【ちょこっと古語解説】
○小竹……竹類のうち、小形で茎の細いもの。
○み山……山の美称。
○さやに……さやさやと。
○さやげ……元の形は「さやぐ」で、(草木の葉などが)さやさやと音を立てること。
○妹……男性から見た親しい女性のこと。妹だけではなく、妻や恋人も含む。
○ぬれ……元の形は「ぬ」で、完了を表す助動詞。「~た」くらいの訳。
○ば……原因・理由を表す語。「~なので」くらいの訳。
小竹の葉はみ山もさやにさやげども我は妹思ふ別れ来ぬれば(万葉集2-133)




