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第2首 ひとめ惚れ
かすがのの ゆきまをわけて おいいでくる くさのはつかに みえしきみはも
(壬生忠岑)
神社の新春のお祭り。
前の日に雪が降って、一面が真っ白。
ぼくはお参りをしてから、木立の中を歩いていた。
白い雪を踏みながら歩くと、なんだろう、雪を割るようにしてほの見えるもの。
若草だ。
嬉しくなってしゃがみ込んだぼくは、さくとかすかな音を聞いた。
顔を上げたぼくのそばを、着物のきみが通り過ぎる。
ほんの一瞬目が合って、そのとき確かに心に生まれた想い。
認めます、一目惚れでした。
【ちょこっと古語解説】
○春日野……奈良市やその付近の名称。
○はつかに……「わづかに」ということ。
○はも……「~だなあ」の意。この和歌が詠まれた平安時代には、古めかしい言い方になっていた。
春日野の雪間を分けて生ひ出でくる草のはつかに見えし君はも
(古今和歌集)