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第196首 君を待つ雨
あしひきの やまのしずくに いもまつと われたちぬれぬ やまのしずくに(大津皇子)
山の中であなたを待っていると、折からの雨。
木々の間から水の雫がぽつり、ぽつり。
それでもずっとあなたを待っていた。
わたしはすっかりと濡れてしまったよ。
【ちょこっと古語解説】
○あしひきの……「山」に関連する言葉を導く枕詞。枕詞とは、それ自体は意味を持たず、ある特定の語を導入するために置かれる飾りの言葉のこと。
○妹……男性が親しい女性を呼ぶときの言葉。妹に限られず、妻や恋人も指す。
○ぬ……完了を表す助動詞。「~た」くらいの訳。
あしひきの山のしずくに妹待つとわれ立ち濡れぬ山のしずくに(万葉集2-107)




