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第195首 大雪の理由
わがおかの おかみにいいて ふらしめし ゆきのくだけし そこにちりけん(五百重娘)
竜神にお願いしたのです。
わたしの住む岡に雪を降らせてくださいと。
そちらでも雪が降ったとのこと。
きっと、こちらの雪のかけらが、そちらで散ったのでしょう。
【ちょこっと古語解説】
○おかみ……雨や雪など、水をつかさどると信じられていた神。竜神。
○降らしめし……「しめ」は元の形は「しむ」で、「~させる」という使役の助動詞。「し」は元の形は「き」で過去を表す助動詞。全体で、「降らせた」くらいの訳。
○雪の摧けし……雪がくだけたもの。
○けむ……過去の推量を表す助動詞。「~しただろう」くらいの訳。
【ちょこっと背景解説】
○この和歌は、第195首への返歌。返歌とは、人から贈られた和歌に対する「返」事の「歌」。
わが岡のおかみに言ひて降らしめし雪の摧けし其処に散りけむ(万葉集2-104)




