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第193首 恋心素直に
たまくしげ みもろのやまの さなかずら さねずはついに ありかつましじ(藤原鎌足)
みもろの山のさなかずら。
そのさなかずらのつるを、あなたのところまで。
あなたに巻きつけて、たぐりよせたい。
そうして、あなたを手に入れて、一緒に寝ずにはいられない。
【ちょこっと古語解説】
○玉くしげ……櫛などの化粧道具を入れる美しい箱。箱には、中身があることから、「み」を導く枕詞となる。枕詞とは、ある語を導くための前置きとして使われる言葉で、訳にはあらわれない。
○みもろの山……三輪山のことか。三輪山は、今の奈良県桜井市三輪にある山。
○さなかずら……つる性の木。さね(=男女が共寝をすること)を導く
○かつましじ……「~ないだろう」「~できそうにない」の意。
【ちょこっと背景解説】
○この歌は、第192首への返歌。返歌とは、人から贈られた歌に対する、お「返」しの「歌」のこと。
玉くしげみもろの山のさなかずらさ寝ずは遂にありかつましじ(万葉集2-94)




