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第191首 止まない心
あきのたの ほのえにきらう あさかすみ いずえのかたに わがこいやまん(磐姫皇后)
秋の田に稲穂が豊かに実っている。
穂の上には、明け方の霧がかかる。
この霞は、やがてどこかへと消えてしまうだろう。
でも、わたしの恋心が消えて止むことはない。
【ちょこっと古語解説】
○霧らふ……霧・霞などが辺り一面に立ち込める。
○朝霞……朝に立つ霞。霞とは、空中に微細な水滴が漂い、空や遠景がぼんやりとする現象。
○何処……どのあたり。どちら。
○む……推量を表す助動詞。「~だろう」くらいの訳。
秋の田の穂の上に霧らふ朝霞何処の方にわが恋ひ止まむ(万葉集2-88)




