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第183首 思いの現実
ほのかにも みしはゆめかと たどられて さめぬおもいや うつつなるらん
ほんの少しの間だったけれど、確かに交わした思い。
それはただの夢だったのか、と途方に暮れる。
夢から覚め、それでもなお冷めない思いがある。
この思いこそ、現実なのだろうか。
【ちょこっと古語解説】
○見し……「見」は、元の形は「見る」で、ここでは、単に視界に入れることではなく、男女が結ばれることを指す。「し」は、元の形は「き」で、過去を表す助動詞。
○たどら……元の形は「たどる」で、途方に暮れる、意。
○うつつ……現実、のこと。
○なる……断定を表す助動詞。
○らむ……本来は、現在の推量を表す助動詞で、「今頃~しているだろう」と、現在、目前に無いものについて思いを馳せる用法であるが、ここでは単なる推量の意味。「~だろう」くらいの訳。
ほのかにも見しは夢かとたどられてさめぬ思ひやうつつなるらむ(新葉和歌集)




