18/297
第18首 婉曲な拒絶
わたつみと あれにしとこを いまさらに はらわばそでや あわとうきなん
(伊勢)
わたしのベッドはまるで荒れた海のよう。
ずっとあなたが来てくれないので泣いていたの。
今さら会いたいだなんて言ったってさ。
あなたを迎えるためにベッドの塵を払おうとしても無理なんだ。
塵を払うわたしの袖はこの涙の海に泡となって浮いてしまうから。
【ちょこっと古語解説】
○渡津海……海のこと。
○あれにし床……あれには、「荒れ」と、「離れ」の二つの意味が掛かっている。あなたが「離れ」てしまったので、涙のため海のように「荒れ」てしまったベッド、というくらいの意味。
○払はば……ここでは、恋人の訪れを待って、ベッドメイキングをすること。
○なむ……「必ず~だろう」の意。第4首の「なん」は、「必ず~しよう」という意味でした。
渡津海とあれにし床を今さらに払はば袖や泡と浮きなむ
(古今和歌集/恋4-733)




