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第178首 一夜のため
いのちやわ あだのおおのの くさまくら はかなきゆめも おしからぬみを
命なんてはかないものではないか。
阿田の大野に宿を取った際に出会った人。
あの人との夢のような一夜のため、この身を捧げても惜しくはない。
【ちょこっと古語解説】
○あだの大野……阿田の大野。今の奈良県五条市のあたり。あだに、地名の「阿田」と「あだなり(=はかない)」の「あだ」が重ねられている。このように一つの言葉に、二つの意味を重ね合わせる技法を、掛詞という。
○草枕……旅寝のこと。
命やはあだの大野の草枕はかなき夢も惜しからぬ身を(新続古今和歌集)




