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第177首 命延ばして
わすれじの ちぎりばかりを むすびてや あわんひまでの のべのゆうづゆ
忘れないよ、また会おう……。
結んだ約束だけを胸にした旅路の空の下。
夕暮れに広がる野の草の上に、露が結ばれる。
その露のようにはかない我が身だ。
約束を果たすまでの命があれば、と祈らずにはいられない。
【ちょこっと古語解説】
○じ……打消意志を表す助動詞で、「~しないようにしよう」「~しまい」くらいの訳。
○契り……約束。
○逢は……元の形は、「逢ふ」で、男女が思いを遂げること。
○む……婉曲を表す助動詞。婉曲とは、断定を避ける表現のことで、ここでは、「逢ふ日」が来るかどうか分からないので、「逢はむ日」としている。
○野べ……野のあたり。野原。
忘れじの契りばかりをむすびてや逢はむ日までの野べの夕露(新続古今和歌集)




