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第172首 染む葉と心
しられじな しのぶのやまの はつしぐれ こころのおくに そむるもみじば
しのぶ山に今年初めての時雨が降る。
木々の葉はすっかりと色を改めた。
耐え忍んだ恋心の色も彼女のために染まっている。
しかし、紅葉とは違って、こちらは知られないのだろうな。
【ちょこっと古語解説】
○知られじな……「れ」は元の形は「る」で受身を表す助動詞。「じ」は打消推量を表す助動詞。「な」は詠嘆を表す助詞。全体で、「知られないだろうなあ」くらいの訳。
○しのぶ……今の福島県北部をさした旧郡名。
○初しぐれ……晩秋に降るその年初めての時雨。
○そむる……元の形は「そむ」で、「染まる」の意。
知られじなしのぶの山の初しぐれ心のおくにそむる紅葉ば(新続古今和歌集)




