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第171首 水の思い出
おもいいでよ のなかのみずの くさがくれ もとすむほどの かげはみずとも
思い出してください、わたしのことを。
昔一緒に汲んだ野中の清水が草に隠れ、かつての澄んだ面影がなくなってしまったとしても。
【ちょこっと古語解説】
○野中の水……野の中に湧く清水。特に,播磨国印南野にあったという清水のこと。播磨国印南野は、現在の兵庫県南部の加古川・明石川二流域にまたがる野。溜め池が多いことで有名。「野中の水」は古今集のある和歌を踏まえた表現で、「むかし親しかった人」の象徴。
思ひ出でよ野中の水の草がくれもとすむ程のかげは見ずとも(新後拾遺和歌集)




