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第168首 嫌えない月
ひとをこそ うらみはつとも おもかげの わすれぬつきを えやはいとわん
あの人のことを恨み通しても月までは嫌えない。
あの人のことを思い出させてくれるから。
恨みながら恋しく、慕いながらも憎い。
【ちょこっと古語解説】
○人……「大好きなあの『人』」の意。恋人や片思いの相手を指す。
○こそ……強調を表す助詞。訳には表れない。
○果つ……動詞の下について、「すっかり~し終える」意を添える。
○とも……「たとえ~したとしても」の意を表す助詞。
○面影……「顔つき・おもざし」のこと。
○ぬ……元の形は「ず」で、打消を表す助動詞。
○え……反語を伴って、「とても~できない」の意を表す。
○やは……「~だろうか、いや~ではない」と、疑問の形を借りて打消の意を表す、反語という用法を持つ表現。
○いとは……元の形は、「いとふ」で、いやがる、こと。
○む……意志を表す助動詞。「~しよう」くらいの訳。
人をこそ恨み果つとも面影のわすれぬ月をえやはいとはむ(新拾遺和歌集)




