168/297
第167首 思い出の鐘
まちしよに またたちかえる ゆうべかな いりあいのかねに ものわすれせで
あの人と結ばれる夜のことをずっと待っていた。
そのときの夕暮れに、つい立ち返ってしまう。
すっかり忘れたと思っていたのに……。
入相の鐘の音を聞くと思い出すときがあるの。
【ちょこっと古語解説】
○し……元の形は「き」で、過去を表す助動詞。
○よ……「夜」であり「世」である。「夜」は、男女が会う時間帯であり、「世」は、男女の仲のこと。
○入相の鐘……夕暮れにつく寺の鐘。また、その音。
○で……打消接続を表す助詞。「~ないで」くらいの訳。
待ちしよにまた立ちかへる夕べかな入相の鐘に物わすれせで(新拾遺和歌集)




