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第165首 旅先の一夜
つゆしげき のがみのさとの かりまくら しおれていずる そでのわかれじ
露に濡れた野上の里で仮の宿り。
一夜の慰めが百年の恋へと変わる。
別れに打ちひしがれつつ宿を立つ。
重たい袖は露のせいか涙のせいか。
【ちょこっと古語解説】
○しげき……多い、こと。
○野上……岐阜県不破郡関ヶ原町の地名。もと中山道の宿駅。遊女(招かれて、歌舞・音曲を演じるなどして、客を楽しませることを職業とする女)の里として知られていた。
○仮枕……旅先で宿泊すること。
○しをれ……元の形は「しをる」で、「悲しみにうちひしがれる」の意。
露しげき野上の里の仮枕しをれていづる袖のわかれ路(新拾遺和歌集)




