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第162首 衣返しても
きえわぶる しものころもを かえしても みるよまれなる ゆめのかよいじ
あの人を思って落とした涙が冬の寒さに霜になる。
その霜の衣を裏返しに着て寝て、あの人との逢瀬を祈る。
そうまでしても、夢の中で会える夜は稀なのだ。
【ちょこっと古語解説】
○わぶる……元の形は「わぶ」で、動詞について、「~しづらくなる・~しきれない」の意を添える。
○衣を返し……衣服を裏返しに着て寝ることで、そうすると、恋しい人を夢に見ることができると信じられていた。
○夢の通ひ路……夢の中で行き通う道。夢に見ること。
消えわぶる霜の衣を返しても見る夜まれなる夢の通ひ路(新拾遺和歌集)




