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第161首 思い出は恋
こいしなん のちのよまでの おもいでは しのぶこころの かようばかりか
ぼくはもうこの恋のつらさに死ぬだろう。
それなのに、来世までの思い出に、思い当たるものがない。
あなたとともに人に知られないように秘め隠してきたこの恋。
持って行ける思い出といえば、その恋心くらいのものだろうか。
【ちょこっと古語解説】
○む……推量を表す助動詞。「~だろう」くらいの訳。
○後の世……来世のこと。
○しのぶ……「包み隠す」の意。
○かよふ……通じる。(恋心が)あなたに通じる、ということ。
恋ひ死なむ後の世までの思ひ出はしのぶ心のかよふばかりか(新拾遺和歌集)




