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第16首 一夜を待つ
いまこんと いいしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな
(素性法師)
すぐに来るよ、というあなたの言葉。
それを頼みにして待つ秋の夜長。
何を話そうかな、なんてうきうきとして。
けっして夜が長いなんて思わなかった。
でも、あなたは来なくて。
気がつくと、ほら、有明の月が出ちゃったみたい。
【ちょこっと古語解説】
○む……「~しよう」の意。
○長月……陰暦(昔のカレンダー)の九月。今の十月くらい。秋分を過ぎて、夜が「長」くなる月。
○有明の月……明け方まで残る月。第11首参照。
○つる……「~した、~してしまった」の意。お勉強的なことを言うと、完了の助動詞「つ」の連体形。
今来むといひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな
(古今和歌集/恋4-691)




