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第156首 恋しくて夢
こいしさに おもいみだれて ねぬるよの ふかきゆめじを うつつともがな
彼女が恋しくて乱れた思いのまま眠りについた。
開かれた夢の中で、彼女に出会う。
二人抱きしめあって夜を越え、目覚めると、かたわらにその姿は無い。
夢を現実にすることができたらと、そう思わずにはいられない。
【ちょこっと古語解説】
○ぬる……元の形は「ぬ」で、完了を表す助動詞。「~た・~てしまった」くらいの訳。
○夢路……夢の中で行き通う道のこと。あるいは、夢それ自体のこと。ここでは、後者。
○うつつ……現実、のこと。
○もがな……願望を表す助詞で、「~であればなあ」くらいの訳。
恋しさに思ひみだれて寝ぬる夜のふかき夢路をうつつともがな(新千載和歌集)




