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第153首 恋しさ消え
たのみありて まちしよまでの こいしさよ それもむかしの いまのゆうぐれ
夕暮れに思い出す。
あの人が恋しかったときのことを。
きっと来てくれるって信じて、頼りにして、待っていた。
それなのに来てくれないことが幾夜も重なって……。
あの晩も、約束したのに来てくれなかった。
それが最後、あの晩以来、誰かを頼ることもなくなったわ。
人を恋しく思う気持ちも今は昔。
日の沈むのを眺めながら、わたしはひとり。
【ちょこっと古語解説】
○たのみ……頼ること。
○し……元の形は「き」で、過去を表す助動詞。
たのみありて待ちし夜までの恋しさよそれも昔のいまの夕暮(風雅和歌集)




