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第147首 留まるもの
ひとはゆき きりはまがきに たちとまり さもなかぞらに ながめつるかな
秋の日の夜明け。
あの人は立ち去って、ひとり残されたわたし。
全くの上の空、ぼんやりと庭を見る。
留まってくれるのは垣根に漂う霧くらいだなあ、なんて。
【ちょこっと古語解説】
○人……「恋しいあの人」の意。
○まがき……竹や柴などで、目を粗く編んで作った垣。
○さも……まったく、の意。
○中空に……元の形は「中空なり」で、上の空である状態をいう。
○ながめ……元の形は「ながむ」で、物思いにふけること。
○つる……元の形は「つ」で、完了を表す助動詞。「~た・~てしまった」くらいの訳。
人はゆき霧はまがきに立ちとまりさも中空にながめつるかな(風雅和歌集)




